もう一度、白には戻れない。

こんばんは、夜の時間。ここでは好きなことを書こうと思ったけれど、文章を書くことが久しくて意外と何から書けばいいのかわからなくなっている。とりあえず、なんでもいいから書いてみよう。そう思って、キーボードを叩く。
何も知らない頃の無敵さ、あれは本当に最強と言えるかもしれない。自分でいうのも憚られるけれど、私はたぶん、白色だった。そして色を混ぜ入れることを恐れていた。恐れていたはずなのにいつの間にか受け入れて、自分も色を与える側になろうとすらしているのだ。
白色だろうと、何色だろうと、いつだって何かしら悩むことにはなる。でも取り返しのないところにきている、ということは分かる。一度混じってしまったら最初の色には戻れないのだ。
最近、読み始めた本がある。23歳でこの世界から絶ったジャック・ヴァシェによる手紙で展開される『戦時の手紙』だ。シュルレアリスムについて、アンドレ・ブルトンを調べていたところ出会った。なぜだか説明ができないけれど、気軽に読み進めることができなくて、少しずつ、恐る恐るページを捲っている。まだ冒頭の部分ではあるけれど、既に一文が頭を離れない。前後の文章の繋がりは置いておいても、この一文は今の自分にはすごく刺さるもの。
私自身の完全なる生の不在、まるっきり思考しない自動機械のようなこの生が原因だ。
『戦時の手紙』ジャック・ヴァシェ大全 (ジャック・ヴァシェ/ 訳:原 智広)
これを書いた本人は決して不特定多数の誰かに読まれるために書いたわけではないだろうから(この本の”はじめに”の部分を読むとそれが分かる)、そういうものを読むというのは、なんていうか、通常以上に敬意を持って読みたいという気持ちが生まれる。そして、とても、恐い。知る前と知らない後では景色が変わる気がしているから。……この恐さは、ポジティブである。